「ジェーン・エア」
というミュージカルを観ました。
私「嵐が丘」は読んだことがありますが、「ジェーン・エア」は読んだことがなく、全く予備知識なく行ってまいりました。
結論から言うと、大変素晴らしかったです。
久々に上質のミュージカルを観ました。(去年の「レベッカ」以来か。)
松たか子さんという女優は、本当に素晴らしい女優ですね、ジェーンの心の屈折・子どもの頃抱いた憎しみ・意志の強さ・清廉な心持ち、などなどが本当によく伝わってきました。
特に「清」。
あの化粧っけのない顔、そして落ち着いた色の地味な衣装に、「清」という文字が映し出されているように感じられました。
松さん自身がどういう人かは知りませんが、あれだけ色々な役をやっていて、テレビでもよくお見かけする方なのに、彼女自身が持っている個性やイメージが出てこずに「ジェーン」にしか見えない、と言うのも素晴らしいと思いました。
「松さん」という人間に役を乗せるのではなくて、松さんの人格は消えて、松さんのからだの中にジェーンが入っている感じ。
ラ・マンチャのアルドンサのときはそれでも、なんとなく育ちの良さがにじみ出ていて、あばずれになりきれていなかった気がしたけれど、今回は本当に「ジェーン」だ、と思いました。
(こんなこと言っては失礼ですが、ミュージカル界のスター、山口祐一郎さんは、ぶっちゃけどの役見てもおんなじに見えるんですよね。。。
特に最近は、コロレド・トート・ヴァンパイア・カリオストロ、とエキセントリックな役が多いので、余計に一緒に見える。。。歌い方もおんなじだしね。
ただし我々はもう山口組の傘下に入ってしまっており、「祐一郎さん」を観たくて劇場に足を運んでいるところがあるので、それはそれでいいんですけど)
話がそれました。
ジェーンが「清」く見えたのは、あの歌声もよかったのかなぁ。。。と思います。
美しくてよく通る力強い歌声。
彼女は歌もうまいことはもちろん知っていましたが、ここまで力強く、通る声だったとは。
昔少しだけ歌を習っていたことがありますが、細い穴に糸を通すように、とよく先生に言われたものです。
言いたいことは分かるけれどどんな風にしたらそれができるのかが分からないまま、結局歌のレッスンからも遠ざかってしまいましたが、松さんはそれが出来ている気がしました。
(その「細い穴を通す歌声」かどうかが、私のミュージカル俳優(特に女優)の歌の巧拙を決める価値基準なのであります。
余談ですが、新妻聖子さんは本当にきれいに細く細く澄んだ声で歌いますが、それでも2003年のミュージカルデビュー当時はそれほどでも無かったと、今2003年レ・ミゼラブルのCDを聴くと思います。
もちろんとても上手ですが、彼女の現在の実力を持ってすればこんなものではないぞ、と思うのであります。やはり練習とか経験とかは大事ですね)
さて、一方の橋本さん。橋本さんは実はミス・サイゴンでしか見たことがなく(この秋ようやく橋本バルジャンを見る予定。楽しみ☆)、あのエンジニアは色気がありすぎるな、私がキムだったらクリスじゃなくエンジニアを好きになるな、と思いましたが、今回もやはりかっこよかったです。
男の人は眉間にしわがあってもかっこよく見えるのでうらやましいと思います。
ただ、、、松さんがあまりにも素晴らしすぎて、橋本さんが若干かすんだのは事実。。。
食われているとまでは言わないけど、エドワード・ロチェスターがどういう人なのか、無骨な見た目や言葉遣いと、その一方で垣間見せる心の闇・繊細さなどなどは、ジェーンのセリフでは伝わってきましたが、ロチェスターの表情では分かりませんでした。
まあジェーンとロチェスターでは、心情を吐露したり、生い立ちを語ったりするシーン(時間)に差があるのは事実ですから、仕方がないと言えば仕方がないのですが。
ロチェスターの言動のトリガーになっていたものは、
・望んでもいない結婚相手と結婚をさせられ、しかもその相手が病んでいた(という被害者意識)
・次に出会った女性は奔放で、自分に子どもだけを残して他の相手と消えた(これも被害者意識)
・自分は金持ちで、いい家柄である(という自負もあるし、そうであるが故に自分の財産目当ての相手が言い寄ってくる)
等などで、これは心を屈折させるに足る充分な条件だと思いますし、序盤の彼の暗さには納得が行くのですが、そんな彼が、ジェーンに対して愛を打ち明けるときにあけすけ過ぎる、と思うんですよね~
たぶん恋愛をするのが怖い、とか、また裏切られるんじゃないか、とか思ってるはずなのに、ジェーンが自分を愛している、とどこで確信したのやら、なんとなく自信満々すぎる気がしました。(駆け引きがうますぎる)
これは原作でもそうなのか?それとも橋本さん自身の持つ「陽」のイメージがそうさせてしまうのか?これは原作を読みたいと思います。
いやでもさ、あんなカッコいい人と(原作では「美男子ではない」という設定になっていますが)一つ屋根の下に暮らしていてさ、ふとしたときに見せるなんともいえない暗さや繊細さ、そんな人がいたら、そら惚れるよねーーー
私が彼の心の闇を取り払ってあげたい☆とか思うと思うよ。
そしてあっという間に好きになっちゃって、そしたら向こうもこっちを好きで、だけどやっぱり屈折してるもんだからやきもちを焼かせようと画策したりして、大人なのにそんな中学生みたいなことされたら、そりゃ惚れるってもんよ。
挙句の果てに「ぼくのジェーン」だもの、今まで男性に縁が無い人生を送ってきたジェーンとしたらそらイチコロでしょうよーーーーっっっ
って若干変態入ってしまってすみません。。。
私ファザコンですので、すごく年上の男の人と恋に落ちる設定に弱いのです。
ロチェスターとジェーンは20歳差、もうドンピシャです。
(そういう意味で、そんな設定を地で行った市村さんと篠原涼子さんのカップルは本当にうらやましかった)
・・・若干個人的な趣味の話になってきましたので、話をジェーン・エアに戻します。
今回は歌のへたくそな人もおらず(これ重要)、アンサンブルも少なく、場面転換もなく、無駄な部分が削ぎ落とされたすごくシンプルな舞台でとてもよかったです。
子役ちゃんもみんな上手で、特にアデールをやった彼女は素晴らしかった。
(子役ちゃんはほとんどレ・ミ経験者。ガブやちびエポ・ちびコゼとして、前にも拝見していたかもしれません)
まあとにかくよく出来ていた舞台でした。役者が優秀で、演出家にも才能があると(ジョン・ケアードでした)、これだけまとまった、美しい作品が出来上がるのだなぁ、と感心しました。
再演希望。。。(って早いわ)
(最後にまたまた余談ですが、観終わったあと若干のデジャブ感があって、ああこれは「レベッカ」に似ているんだな、と思いました。
舞台はどちらもイングランドの古くて大きなお屋敷、お屋敷の主は暗い過去を持つお金持ちの中年男性で、そこに、身分が不釣合いの若い女性が嫁ぐ。
嫁ぎ先で待ち受ける、前の奥さんの影。。。若干サスペンスチックな色合い、そして最後にお屋敷が火事になるところまで一緒です。
原作者はどちらも女性ですが、どっちの方が古いんだろう。。。?
一番違うのは、レベッカでは主役?の「わたし」にあまり感情移入ができない、と言うより魅力を感じないのに対し、「ジェーン」は強い自我のある個性的な女性である、ということでしょうか。
あとは「ジェーン・エア」は宗教色がとても強いです、ジェーンの行動は、多分に宗教に基づいています。
ミュージカルに関して言えば、どちらも音楽が素晴らしいのです。
レベッカの来年の再演、とても楽しみです。)
by okanatsuworld
| 2009-09-07 21:11
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