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オカナツワールド

ジェイコム株その後


いくつかの証券会社が自己売(ディーリング)で得た利益を返還するべきかどうか、という議論は残っていますが、まあ一応の決着を見たジェイコム株です。

この日第一報を受けて面白おかしく書いたときから、情報も増える度に、事態がわかってくる度に、私の中でも色々と考え方が変わって来ました。

以下、今回の件を忘れないために、自分の意見をまとめてみたいと思います。
(これはあくまでも私の考えです。この件ではいろんな人と話をしましたが、私が話した人はみな金融業界に籍を置く人なのに感じ方は様々でしたので、私の意見は決してマジョリティではないし、かと言ってマイノリティなのかどうかも分かりません)

まず、12月11日日曜日の晩(『義経』を見終わったあと)のニュースで
「東証ミスを認める」
と言うのを見たときの最初の感想は、

「お、みずほ寄り切ったなー」

でした。

まあ流通株数よりはるかに多いロットの注文を受けつけてしまう東証のシステムもどうなんだ、とは思っていましたが、みずほくらい大きくて影響力のある金融機関でないと、ここまでゴネられない(東証に頭を下げさせられない)と思う。
(注:東証のシステムの不具合は、異常な数の注文を受け付けちゃったことではなく、みずほ証券からの注文の取り消しができなかったことにあるようですが)

翌月曜日、一部でこの騒動の第一義的な原因が東証にあるような書き方をしている報道があったことにはあきれましたが、まあこの時点では、世論を「みずほも気の毒に」、という方向に少し持って行くことができたねぇ、くらいに思っておりました。

が、しかし。

その翌日日興・モルスタ・CSFBその他大手の証券会社が次々と大量保有報告書を提出。
証券会社の自己売やってるような人なら、あの注文が誤発注だってことは手口を見れば一目瞭然だろうに、儲けどころだとガンガン買いを入れてしまう証券会社、そして大量保有報告書に3000株を上回る数を保有してますなんていけしゃあしゃあと書けてしまう証券会社の神経を疑うわ(まあCSFBは3000株を若干下回ってましたが)、と思っちゃった。

UBSに至っては38,000株。流通株数どころか発行済み株数も上回ってる。
それだけの注文を一気に出せる枠を持ってる東京のディーリングデスクもすごいが。

まあ新聞を読むと、ディーリングシステムが割安だと自動的に判断して買いに行ってたようなことも書いてありましたが、システムを止めた証券会社もあるみたいですからね、あまり言い訳にはならない気がします。

証券会社で働く知人曰く、「飢えた狼の前に子羊が何匹も放り出されたようなもんだからね、買わないわけにいかないよね」だそうです。
まあ特に出来高契約で働いてるディーラーなんかそうだよね。

大量保有報告書を出した証券会社は、買ったあと売り切ることが出来なかっただけなのであって、その日のうちに売り切って、手締まってしまった証券会社はほかにいくつもあるんですよ。
こういう飢えた狼がたくさんいたおかげで、犠牲となった羊の数(みずほの損失額)はどんどんと膨らんでいくのでありました。

さて、この人の失敗に付けこむような、証券会社の倫理観とか道徳ってどうなってるのかしら、とモラリストのワタクシは思っておったわけなんですが、そこへ与謝野さんの一言。

「美しくない」

いやー言っちゃったよ。わかる。わかるけど。大臣が言っていいんかい、そんなこと。

与謝野さんの言ってることは至極妥当だと思うし、考え方には全面的に賛同しますけど、金融相という立場の人があんなことを言っちゃったことには、私はちょっといかがなものかと思いました。

そして次のステージ。
ジェイコム株で儲けちゃった証券会社が軒並み利益を返すと言い出した。
見れば日証協がそのように要請しているらしい。そして投資者保護基金に入れたらどうか、と言ってるらしい。

例えばね、投資者保護基金に集まったお金が、今回のようなミスで予期せぬ損失を被った証券会社のために使われるのであれば、そこに拠出するロジックも理解できようというもの。
でも投資者保護基金のお金はあくまでも投資家のためのものだ。合理性がないと思うんです。
返すならみずほに返せばいいし、もっと言うと返す必要なんてない。

だって、倫理的道義的な問題はあるかもしれないけど、違法行為をしたわけではないし、もう約定してお金が会社の懐に入ってしまった以上、この利益は株主のものなのだから。
踏むべきステップを踏んで、ディーラーがディーラーとして行うべき業務を遂行した結果、合法的に得た利益を、そこに返すことに何の合理性も持たないにも関わらず投資者保護基金に拠出するなんて、株主になんと説明する?

与謝野さんがね、言わなかったら、あるいはこんなことにはならなかったと思っとるんですよ、私はね。
証券会社はあまり世間でのイメージも良くないし、だからほかの業界以上にレピュテーションを気にするんですよ。
それなのに金融大臣をして「美しくない」などと言われちゃあ、(普段はマーケットなどにあまり興味のない)世間の耳目が嫌でも集まりますわな。
そして「だから証券は…」なんて言われることが目に見えとる。
だから「自主的に」返還せざるを得なくなる。
目先の何十億を失うことより、証券業界のイメージを損ねることの方がずっと怖い。

みずほに返すより、投資者保護基金に拠出する方が税制面で有利なので投資者保護基金に拠出することに決めた、とか聞いたことはありますが、どうなるんでしょうね。

どうでもいいですが、ジェイコム株連日ストップ高で、今や180万を超えとります。
ジェイコムが上場した日、みずほの大量の売りを見て狼狽売りしてしまった投資家(損切りしたかもしれない)が、今回の件の、実は一番の被害者かもしれん。

by okanatsuworld | 2005-12-20 14:24 | 政治/経済/news

無芸大食晴れ女オカナツが留学時代に記していた「無芸大食留学備忘録」の帰国後バージョンです。
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